Techart LM‑EA9 など、Leica Mレンズを Sony E ボディでAF化するアダプターは市販され、実際にユーザーも多い。同じLeica同士 —— Mレンズを Leica L(SL/TL/L‑Mount Alliance ボディ)に付けた場合のAFアダプターがいまだに存在しないのはなぜか?
そこで、現時点で入手できた情報をまとめ、自分用メモとして整理した。
1. フランジバック差(7.8 mm)が生む物理的制約
マウント |
フランジバック |
差分 |
Leica M |
27.8 mm |
Leica L |
20.0 mm |
7.8 mm |
Sony E |
18.0 mm |
9.8 mm |
- Techart LM‑EA9(M→E)は 約15 mm厚。既に E の差分 9.8 mm を超えており、本体がレンズ側にもカメラ側にも張り出している。
- M→L では差分が 7.8 mm しかないため、同じ構造を単純縮小するのは難しい。
2. レンズ重量と駆動力のギャップ
Leica Mレンズの質量例
レンズ |
重量 |
Summilux‑M 35 mm f/1.4 |
≈ 320 g |
Summilux‑M 50 mm f/1.4 (2023) |
≈ 335 g |
Noctilux‑M 50 mm f/0.95 |
≈ 700 g |
Apo‑Summicron‑M 90 mm f/1.5 |
≈ 1,010 g |
スマホ用 VCM/MEMS の対応質量
例 |
想定質量 |
厚さ |
Alps ATMC1Z9 |
0.08 g |
2.8 mm |
MEMS AF Module |
0.25 g |
5.9 mm |
試算: 300 g レンズを保持する最低力 ≈ 3 N。ATMC1Z9 が出せる力は 0.007 N 程度 → 約400倍不足。
3. 耐久・熱設計
- VCM/MEMS はレンズ質量 <1 g 想定で 10⁵〜10⁶ サイクル。質量を数百倍にすると寿命データが消える。
- 必要電流を単純比例すると十〜百アンペア。7.8 mm 内での放熱・シールドは現実味がない。
4. ボディ側AF方式との相性
ボディ |
AF方式 |
コメント |
Leica SL/SL2 |
Contrast + DFD |
Mレンズ用プロファイル非公開 → DFD利用不可 |
Sigma fp/fp L |
PDAF + Contrast |
ボディ側は対応可。ただしアダプター側駆動力問題は解決しない |
5. 現時点の自分の結論)
- 物理空間と駆動力の両面で 未解決課題が大きい。
- スマホ向け超薄型アクチュエータ技術を流用しても、重量・耐久・放熱がボトルネック。
- ボディ側 AF 方式(SL の DFD)も追加ハードル。
調べた限りでは「実用的・量産レベルでは無理そう」。 超小型高トルクモーターや熱対策のブレイクスルーが出れば状況が変わるかもしれないが、当面は「パッシブアダプター+マニュアルフォーカス」が現実的な選択肢。